コメット歯科ではやらない 科学的根拠の乏しい治療:トピックス

Dr.安奈が答える

他院でやっていてもコメット歯科ではやらない 科学的根拠の乏しい治療とは

○○という治療法はやっていますか?

コメット歯科クリニックへの、治療お問い合わせ

Dr.安奈当院に「○○という治療法はやっていますか?」とお電話いただくことがよくあります。

基本的に行っている治療法は、当サイトや関連ブログ:副院長の奮闘記Dr.安奈のコメットライフ に掲載されている通りです。ここでは、昨今お問い合わせが多い治療法について、コメット歯科クリニックの見解をDr.安奈が解説いたします。

結論を言ってしまいますと、当院では、科学的根拠に乏しい治療法や、あまりにも患者さんに苦痛となるような治療法は、採用しません。

歯周病治療に3DS(dental drug delivery system)は やっていますか?

3DSは専門的機械的清掃(professional mechanical tooth cleaning;PMTC)で歯垢を徹底的に除去後、抗菌剤を填入した個人用歯列トレー(ドラッグリテーナー)を装着させて歯面および歯周局所に抗菌剤を一定時間作用させる方法であり、クロルヘキシジン製剤が広く利用されている。
(齋藤真規 他、オゾンジェルを用いた齪蝕予防の可能性 日大口腔科学39:26~30,2013より抜粋)

要するに、マウスピースを作って、その中にコンクールなどのクロルヘキシジンといった消毒薬、あるいはフッ素配合薬剤とかを入れて、はめて、5分放置する、というやり方です。1週間に2回を2ヶ月開けて定期的にやるというのが勧められていました。

この方法は鶴見大学の花田信弘教授が20年くらい前にう蝕菌を減らす方法として論文で紹介されたものが元になっているようです。

この先生は「探索歯学講座」という基礎講座の先生です。歯周病科ではありません。

講座の紹介HPには「生活習慣病の保健指導を実践するための基礎知識と能力を育成しているのが探索歯学講座です。具体的には衛生学・公衆衛生学の学生講義と実習の他に、社会歯科学、齲蝕学を担当しています。」とのことで、う蝕を減らす取り組みをされています。

今では、歯周病を良くする方法として使用されている先生方を見かけますが、歯周病「予防」としての可能性があっても、それ以上のものは期待できないでしょう。

論文を探しましたが、歯周病を改善させると結論付けられたものは一つも見つけることができませんでした。

週刊新潮(2017年11月23日号)に掲載された記事「『百寿者』目標なら歯が命!最強『デンタル・ドック』のすゝめ」に3DSが勧められていたようで、その記事に対して、近代口腔科学研究会は、「歯周病菌を選択的に殺菌するという3DS等の非現実的な方法まで、歯周病治療に有効であるかのように記述されている」と非難されていましたが、ま、そういうことです。

患者さんがどうしてもやりたいなら、こちらとしては、マウスピースを作って差し上げることは可能なので、あとはご自分でどうぞ、というところですね。特にうちが取り組んでおすすめするものではありません。

以前にもブログに書きましたが、私は、消毒剤で歯周病菌を抑えれば歯周病は良くなるとは思っていません。物理的な清掃、バクテリアセラピー、歯周病菌に負けない免疫力を栄養素を補うことで達成するのが一番だと考えます。

虫歯治療にドッグスベストセメントを使っていますか?

要するに、患者さん側として期待されていることは、歯を削らないでセメント詰めるだけでどうにかできないか、ということですよね。

いくつかの歯科医院のHPにはこのセメントをこのように紹介していました。

ドックベストセメント治療は、・・・虫歯部分を削るのではなく、歯を削らずに虫歯菌を殺菌する治療方法です。・・・虫歯菌に感染した部分がドックベストセメントの永続的な薬効のおかげで、完全に殺菌され歯自体の自己回復力で再石灰化し、硬い象牙質になります。」

ドッグベストセメントの主な成分は次の通りです。酸化亜鉛 73% 酸化マグネシウム 6% ビスマス 5% シリカ 4% 酸化鉄 3% 銅 2% 塩化銀 1% 含まれている銅イオンと鉄イオンがむし歯菌を殺菌し、他のミネラル成分が歯の再石灰化(再生)を促進します。また、この殺菌成分は半永久的に効果が持続します。・・・金属アレルギーの方によっては、適さないケースもございます」

ウィキペディア のページもありました。

使っていると症例紹介されている先生も、本当に削らないわけでなく、必要な量を削ったり、レーザーで削ったりされてました。

FDAで薬剤認可は通っていますが、クラウンやインレー、矯正装置をつける接着剤としてや、レジン充填の前処理として、初期う蝕の詰め物としての適応は書いてありましたが、(PDFはこちら

「う蝕を削らないで、殺菌できる」

なんて、夢のような材料としては紹介されていません。

ドックベストセメントの論文検索で唯一引っかかったものは(たった1つしか論文がないって目を疑うレベル)

抜いた歯をたくさん用意して、(1)ドックベストセメントをつけたものと、(2)クロルヘキシジン(消毒薬)をつけたもの、(3)ドックベストセメントをつけたけど、24時間後に目で見える部分は取ったもの、(4)何もつけなかったの4グループに分けて、虫歯菌をつけて5日待ったら、付着している虫歯菌の数に差はなかったが、(3)と(4)の方が虫歯が広がっていた。

という内容でした。

ま、何にも治療しないより、いいんじゃないの?レベルってことですね。

ちなみに、虫歯菌は、ドックベストセメントをつけた歯にも付着していたそうなので、「永久に完全に殺菌(静菌でもなく!)」なんて言ったら真っ赤な嘘だと思うんですが、どうお感じになります?

ちなみに、歯髄を温存するために、わざと虫歯を全部削らずに、再石灰化を促す薬剤をおいて蓋をして、3ヶ月待ってから、う蝕を取り除き、最終的な詰め物をする、「歯髄温存療法」は保険適応ですから、普通にやっていることなんですけどね。

この歯髄を残す精度を上げるために、MTAセメントはエビデンスがたくさんあるいいセメントだと思います。

パーフェクトペリオ、3Mixのその後

10年くらい前にパーフェクトペリオというのが話題になりました。

うちにもデモに来てもらったことがあるのですが、うがいする水が耐えられないほど不味くて、とても患者さんに勧められたもんじゃない上に、エビデンスに乏しいので、採用を見送りました。

歯周病学会からも「研究途上の段階で科学的根拠が十分であるとはいえず、・・・安全性や有効性について学術的な場で充分な討議が行われた後に、臨床に応用されるべきである」と見解が発表されるなど、ちょっと信頼性に欠けていると私は感じますが、まだ使っていらっしゃる歯科医院はたくさんあるのではないかと思います。

ちなみにこのパーフェクトペリオを販売している会社のHPの「研究実績」は「準備中」になっていました。。。

他にも、3種類の抗菌薬を混ぜて、虫歯に詰める3Mixとかも話題になりましたが、まあ、もうやっていらっしゃる先生もかなり少数派なんじゃないでしょうか。

勉強もダイエットもそうですけど、治療にも、近道なんて、なかなかないと思います。

元となるブログ記事はこちら>>
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