インプラント体の賞味期限 (チタンエイジング)
現在、インプラント治療で骨に埋め込まれるインプラント体に使われる材料は、チタンまたはチタン合金です。チタンは化学的に安定しており、錆びたり、劣化したりしないという理由から、インプラント体に用いられて来ました。
ところが、2009年にUCLAの小川隆広教授が、「チタンの時間的な劣化現象」という衝撃的な論文を発表されました。
その内容は…
チタンの表面は加工してすぐの状態ならば、非常に高い骨との結合能力があるが、その力は時間の経過にともなって減少する。
と言うものです。 これはチタン表面に空気中の炭素が付着していき、それがインプラント体の骨との結合、生着を阻害するからなのです。
では、具体的にどれほどの期間で、どれほどの能力差が生じるのでしょう。
教授らの実験によると…
加工直後の新しいチタンでは骨接触率(インプラントの周囲にどのくらい骨が出来たか)は約90%に達したのに対し、加工後4週間経過したチタンを使用した場合には、50%程度になってしまう。
結果、加工後3日以内でなければ、インプラントの成功は難しい事も解ってきました。
その多くが輸入品であるインプラント体を、工場で製造後3日で患者様へ施術するということは、当然不可能な事ですし、現状のインプラント体には製造日すら明記されてはいません。
言わば、歯科医院にある すべてのインプラント体が賞味期限 切れ状態なのです。
コメット歯科クリニックの、チタンエイジング対策
チタンエイジングの回復方法として発見・開発されたのが、「紫外線洗浄による改質」です。
「紫外線洗浄」とは、特定波長の複数紫外線を、決められた強度で、特定時間、チタン表面に照射する事です。
これを行うことにより、チタン表面が撥水性から親水性へと変化し、血液に対する親和性も向上します。
コメット歯科クリニックでは、「紫外線洗浄」を、施術に使用するインプラントの全てに施しています。
これによって、インプラント周囲に形成される骨量が増大し骨接触率が上がります。
骨形成のスピードが早まり、治癒期間が短縮され、長期的に安定するインプラント治療が可能になりました。
インプラント体の賞味期限という表記について
メーカーが考えているインプラント体の消費(有効)期限(通常2年から5年)はチタンのエイジングを考慮すると、実際はもっと短いために、あえて賞味期限という表記を用いています。
これまでメーカーが考えてきた消費(有効)期限について、見直すことが迫られていると言えます。
紫外線洗浄はインプラントの成功率に大きく関わるわけではありませんが、インプラント体が紫外線洗浄によってより早く骨と結合する事実は ALL on 4 などの難しい症例には非常に有利になることは間違いありません。