｢噛む｣と聞くと、普通の人は食べることを連想しますが、｢理想的な位置でしっかり噛むこと｣は、単なる｢噛む｣と言う単純な動作ではありません。脳に対する大きな影響がそこにあります。脳からの指令により複数の器官を巧みに組み合わせ、複雑に動かしてなし得る高度な技術が｢理想的な位置でしっかり噛む｣という行為なのです。
ところで、日本の平均寿命が世界一である事は周知の事実だと思います。しかし、(介護の必要のない)健康寿命が他の国と比較してとても短いということは、意外と知られていません。

では、介護が必要になる原因とはなんでしょうか?その原因でもっとも多いのが脳卒中、2番目に認知症、3番目に身体衰弱、4番目が骨折転倒となっています。
(内閣府による平成29年度版高齢社会白書より)

１番目の理由である脳卒中を予防するためには、顎関節が正し＜動き、噛み合わせが良<、しっかり噛めるということが重要であると報告されています。

2番目の理由である認知症は、日本では年々増え続けており、今では85歳を超える2人に1人が発症すると言われております。つまり、この問題は社会問題として国民が総力戦で取り組まざるを得ないところまで来てしまったと言うことなのです。
しかも、平均80歳の歯の残存数が、日本人は8本と先進国の中で最も低く、認知症の発症の多さと関係しているとも言われています。ですから、認知症予防として脳を鍛えるためには、｢理想的な位置でしっかり噛めるように治療しておくこと｣が大変重要なのです。

では、歯で噛んだときの刺激が、｢口からどのようにして脳に伝わるか｣ということを少しご説明します。歯は、歯根と骨の間のわずかな隙間に｢歯根膜｣と言う靭帯の様な繊維があります。この歯根膜の中には周囲の骨とつなげる役割やセンサーの役割を持つ｢受容体｣が存在していて、神経と繋がっています。このセンサーの感度は細い髪の毛1本でも識別することができるほどのため、人体で最も敏感なセンサーと言われています。この神経を介して、情報が脳に伝わり、噛むための筋肉や顎関節、骨などを動かして、｢理想的な位置でしっかり噛む｣と言う複雑な動作を行っているのです。

また最近では｢覚醒ホルモン｣であるオレキシンは、歯や歯茎を刺激することによって分泌されることもわかりました。ボケない脳には、歯から伝わる刺激がとても重要なのです。｢理想的な位置でしっかり噛める｣歯の数が減ることは、脳への情報量が少なくなることに繋がります。そして、学習、記憶、情動、免疫、運動、意欲といった高度な分野の脳の活動が低下してしまうのです。それにより、介護が必要になる3番目の原因である身体衰弱も容易に陥ってしまいます。

｢しっかり噛める｣ことは、身体に様々な効能をもたらしてくれます。なかでも、しっかり噛むことでセロトニンと言うホルモンが分泌され、心地よい睡眠を手助けしてくれるメラトニンがたくさんつくられます。そのため、よく噛むことが美容にも抜群の効果を期待できるのです。そしてセロトニンは｢幸せホルモン｣とも呼ばれており、精神的安定感やストレス解消にもつながります。さらに口を思いっきり動かすことで表情筋も鍛えられます。

結果、目元のたるみが消えて、頬がしっかり上がったチャーミングな若々しい笑顔になり、美しいお顔を作ることができるのです。ですから｢理想的な位置でしっかり噛める｣ように治療し、メンテナンス(定期検診)していくことは、何にも変えがたい健康美容法なのです!

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